外壁塗装にあたって、外壁材の基礎知識は必須です。今回は、現在日本で最も一般的に使用されている「窯業系 (ようぎょうけい) サイディング」について解説していきます。
窯業系サイディングの特徴:長所と短所
サイディングとは、外壁に貼る板材の総称です。日本古来の土壁や80年代まで主流だったモルタル壁など「塗り壁」に代わって、現在の住宅建築の主流になっています。
なかでも、現在の外壁材の 7 割以上に使われて最も普及しているのが、窯業系サイディングです。単に「サイディング」と言えば窯業系サイディングを指していると思って間違いないでしょう。
窯業とは瓦や陶磁器のように、粘度やガラスなど非金属材料窯で高温処理(焼いて)して製品を作り出すことです。つまり、窯業系サイディングとは、セメント質や繊維質を混合したものを高温処理して作られた外壁材です。
窯業系サイディングの特徴・長所
窯業系サイディングの特徴は、安価・軽量で地震に強く、耐火性にも優れていることです。また、モルタル壁に比べ左官などの特別な技術も必要としないことから施工質の安定性が図れ、工期も短縮できることから90年代の登場以来、急速に普及することとなりました。
また、色柄とも様々な意匠を凝らすことが可能で、レンガ調、塗り壁調など好みに応じて選んでモダンな外観にすることができます。
窯業系サイディングの短所
サイディングは温度変化による伸縮や建物の揺れによる動きを吸収するため、板間に目地を入れる必要があります。
この目地にはゴムのような樹脂製のコーキングを注入するのですが、一般的にコーキングはサイディングよりも寿命が短く、早ければ7〜8年で硬化やひび割れなどの不具合が生じる場合があります。
また、サイディングは熱を持ちやすいこともあり、反りや割れが起こることもあります。特に初期のサイディングは厚みが薄く、不具合が起こりやすい傾向があります。
2008年に規格が改正されサイディングの厚みが12mmから14mmに変更されましたが、2008年以前に建築された建物は、反りや割れが起こっていないか一度確認してみるといいでしょう。
10年も経つとサイディングの商品はほぼ廃版になってしまい、割れや反りがあっても同じ製品で替えが効かないのも辛いところです。その場合は補修か、近い製品での張替えで対応する事になります。
窯業系サイディングを外壁塗装する際の注意点は?
それでは、窯業系サイディングの建物で外壁塗装を行う際は、どういった点に気をつければいいのでしょうか?
コーキング劣化が施工時期の目安
前述の通り、目地コーキングのほうが劣化が早いので、施工時期はコーキングの劣化に合わせる場合が多いです。
一口に「外壁塗装工事」と言っても、目地はもちろん屋根・ベランダ等の防水工事も重要な項目になります。
「サイディング自体はまだ劣化していないから……」と目地の防水工事のみを行うと、数年後にまた足場代を払って塗装工事をする羽目になってしまいます。
塗装色は慎重に……
サイディングに限った話ではありませんが、塗装色は慎重に選びましょう。(なぜかモルタル壁の塗装よりもサイディングの塗装のほうが思い切った色を選んでしまうお客様が多い傾向が見られます)
小さな色見本で見た色を大きな建物全部に塗ると、かなり印象が違う場合があります。出来れば、カタログだけでなく実際の塗料を塗った見本板(手板〈ていた〉と言います)を作ってもらい、実際に建物外壁に合わせながら検討しましょう。
クリア塗装も検討しよう
特にレンガ調など柄入りのサイディングの場合、一般的な塗装方法だと塗料の色で柄を塗りつぶしてしまうことになります。目地部分とレンガ部分を塗り分ける「目地作成工法」もありますが、工事費用は高くつきます。
そこで、透明の塗料を塗布する「クリア塗装」なら新築時の色柄を維持したままコーティングすることができます。
しかし、元の色柄を活かすクリア塗装は、あまりサイディングの色あせが進んでしまうと施工出来ません。クリア塗装を検討するなら、サイディングのチョーキングがあまり進行しないうちに施工しましょう。
まとめ
サイディングの外壁塗装をする際のポイントは以下の4点です。
- コーキング劣化が塗装時期の目安
- 塗装色は慎重に、業者の意見に耳を傾けよう
- サイディングの反りや割れに注意
- 色柄を残したいなら早めのクリア塗装
良い業者を見つけて、良い外壁塗装工事が出来ることを願っています!