外壁塗装工事の作業工程を最初から最後までを徹底解説

一口に外壁塗装と言っても、塗料を塗る作業だけではありません。各工程の意味が分からず「外壁をキレイにしたいだけだったのに、この作業は必要なんだろうか……?」と思いながら工事してもらうのは嫌ですよね。

塗装工事をキレイに仕上げるには、塗装に入るまでの「準備」がとても大切です。

そこでこの記事では、戸建て住宅の塗装工事を例に、外壁塗装工事の工程・前編と題して、塗装までの工程を順に説明していきたいと思います。

外壁塗装の作業工程1:足場工事

作業をするための足場を組み立てる作業です。

「2階建てぐらいなら、ハシゴでも出来るんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、関係法令でも 2m 以上の高所での作業は「高所作業」と位置づけられ、作業員の転落を防止する措置を講じなければいけません。

また、どんな熟練した職人さんが塗装しても、ローラーやハケから塗料は少なからず飛散してしまいます。足場の周りをシートで囲うことで、隣家や周囲に塗料が飛散することを防止する意味もあります。

外壁塗装の作業工程2:高圧洗浄

足場が組み上がったら、外壁の高圧洗浄を行ないます。家庭用の洗浄機の倍以上の圧力が出るエンジン式の洗浄機で高圧水を噴射し、外壁を洗浄していきます。

塗料は「塗膜」という言葉から分かるように外壁の上に膜を形成してコーティングします。塗料は下地にしっかり密着して剥がれないよう設計されていますが、塗装する面にカビ・汚れやチョーキングして剥がれかけている塗料が残っていると、本来の密着性が発揮できません。

ただキレイにするだけでなく、これらを除去して、塗装をするための準備をするのが高圧洗浄作業の目的です。

外壁塗装の作業工程3:養生

塗装工事の前に、ドアや窓などの開口部、土間コンクリートや玄関床タイルなどの塗装しない部分を専用のビニールシートやマスキングテープで覆っていきます。これを「養生」といいます。

前述のように、塗装工事にあたって塗料の飛散や落下は避けられませんので、塗料が落ちたりはみ出してもいいように先に覆ってしまうわけです。

これは非常に大事な作業で、職人さんの「質」が窺えるところです。外壁についた表札やインターホン、ポストなど細かいところも「ピシッ」と養生してくれる職人さんなら、塗装もきっと丁寧にやってくれるでしょう。

外壁塗装の作業工程4:コーキング

サッシ周りやサイディングボードの間の目地を防水する作業です。別記事でも説明したとおり、外壁の塗装よりもコーキングの樹脂は寿命が短い傾向にあるので、サイディング張りの住宅の塗装工事ではほぼ必ず行う工事です。

モルタル壁の住宅は壁に目地はありませんが、サッシ周りの目地は防水が必要です。

既存の目地を撤去して新たに樹脂を注入する「打ち替え」と既存の目地の上から上塗りする「打ち増し」の2種類があります。状態や部位により使い分けされますが、見積り書通りの施工がされているかしっかり確認したいところです。

一般的にはサイディング目地は打ち替え、サッシ周りは打ち増しが多いでしょう。

外壁塗装の作業工程5:下地補修、ケレン

ヒビ割れや欠けがあるところは、塗装の前に補修が必要です。特にモルタル壁で、大きめのヒビや欠けがある場合は、事前に補修方法をよく相談しましょう。

「ケレン」とは、建築用語で塗装の前に塗装面のサビや旧塗膜を除去して塗料を乗りやすくする作業のことを言います。広義には前述の高圧洗浄もケレンの一種なのですが、鉄部や木部はサイディングと違いサビを除去したりヤスリをかけて塗料がしっかり密着する準備が必要です。

ツルツルした床は滑りやすいけど、ザラザラした床なら滑りにくいですよね。塗料も同じで、ヤスリをかけて下地をザラザラさせることで表面積が増え、塗料が密着しやすくなります。

ここまでが準備編です。以上の作業工程を経てやっと塗装の工程が始まります。

外壁塗装の作業工程6:下塗り

塗装の最初の工程は下塗りです。下塗りは塗装後の表面には出てきませんが、塗料がムラや剥がれ無く密着するための下地を作る重要な工程です。

なぜ下塗りが必要か?

化粧をする女性ならお分かりでしょうが、すっぴんの地肌にいきなりチークやアイシャドウを塗っても上手く化粧が乗りません。

外壁塗装も同じことで、サイディングやモルタル、コンクリートなど様々な材質の外壁に耐久性のある塗料を密着させるための下地作り、つまりファンデーションにあたる下塗り剤が必要です。

また、特にモルタルやコンクリートは塗料を吸い込む(染み込む)ため、いきなり上塗り剤を塗るとムラになってしまいます。そのため、下塗り剤をある程度吸い込ませることで上塗り剤をキレイに乗せる効果もあります。

下塗り剤(プライマー?シーラー?フィラー?)の違い

見積り書では下塗りの項目に「プライマー・シーラー・フィラー」など表記が分かれている場合があります。ここで簡単に説明しておきましょう。

プライマーは「primary」(最初の)から来ており、最初に塗る塗料、つまり下塗り剤の総称です。

シーラーは「seal」(密閉・密着)から来ており、しっかり密着させるための塗料という意味合いですが、現在ではプライマーとほぼ同義に使われています。

フィラーは「fill」(満たす・埋める)から来ており、細かいヒビ割れなども埋める機能を持った下塗り剤と言えます。

外壁塗装の作業工程7:中塗り

中塗りと言っても下塗りと違い、塗るのは上塗りと同じ塗料です。いよいよ表面に出てくる塗料を塗る工程に入りました。

ところでなぜ、同じ塗料を中塗り、上塗りと2回に分けるのでしょうか?

塗料には規定の塗り厚があります。それを一度で厚く塗ろうとすると、乾く前の塗料が垂れ落ちて、厚みにムラができてしまいます。それを防ぐために2回に分ける訳です。

外壁塗装の作業工程8:上塗り

上塗りすればいよいよ外壁の塗装は完了です。ここまで洗浄や下塗りをきっちりしてくれていれば、上塗りでムラの無いピカピカの仕上がりになるはずです。

当たり前の話ですが、ここで「キレイになったな〜」と感心して壁を触ってはいけません。塗装して半日も経つと表面は硬化したように見えますが、内部はまだ乾燥していません。触った途端に塗膜が破れてしまいます。手も汚れますし、せっかくキレイに塗装してくれた職人さんに手直しをお願いしなければいけません。

外壁塗装の作業工程9:付帯部分の塗装

外壁の塗装が終わると、雨樋や軒など付帯部分の塗装を行ないます。

材質の関係などで外壁とは違う塗装仕様になることも多々ありますので、見積り書どおりの仕様で施工されているか確認しましょう。

外壁塗装の作業工程10:点検、手直し

塗装工事が終わると、養生していたビニールやテープを外して点検と手直しを行ないます。塗り忘れや塗膜の仕上がりの確認をし、必要に応じて手直しします。

特に、色や塗料を切り替える取り合い部分は、テープを貼っていてもどうしてもはみ出したり跳ねたりしますので、細めの刷毛で手直ししていきます。上手な職人さんは、切り替え部分の直線が「ビシッ!」と出ているものです。

点検は絶対に参加しよう!

上記の手直しをするための点検は現場監督や職長が行いますが、最終的には発注した貴方自身が足場に上って、施工業者の責任者同席のうえ点検を行いましょう。

足場を解体した後では、なかなか手直しは応じてもらいにくいものです。ムラやはみ出し等、気になる点があればその時に遠慮なく伝えましょう。

外壁塗装の作業工程11:足場解体

検査、手直しが終わると、足場を解体して完工です。

足場解体後は、再度仕上がりのチェックを行いましょう。足場の部材が接している部分など、解体前の検査では見えにくい部分もあるからです。

まとめ

最後に、各工程の内容と目的をまとめましたのでご確認下さい。

  • 工程①:足場工事
    作業員の安全を確保して、周囲への塗料飛散を防止する
  • 工程②:高圧洗浄
    外壁の汚れや塗膜を除去して、塗料をのせるための準備をする
  • 工程③:養生
    塗装しない部分を覆って塗料が付かないよう保護する
  • 工程④:コーキング
    外壁の目地やサッシ周りの目地を打ち替え、もしくは打ち増しして防水性を復活させる
  • 工程⑤:下地補修、ケレン
    塗装の前にヒビ割れ等を補修、鉄部や木部はサビ除去、ヤスリがけで塗料が密着するようにする
  • 工程⑥:下塗り
    塗料をしっかり密着させるための下地作り
  • 工程⑦⑧:中塗り、上塗り
    ムラなく塗料を塗るために2回に分けて塗装
  • 工程⑨:付帯部分塗装
    雨樋や鉄部・木部など付帯部分の塗装。見積りどおりの仕様で塗装されているか確認
  • 工程⑩:点検、手直し
    最後は必ず足場に上がって、ムラやはみ出しを業者と一緒に点検しましょう
  • 工程⑪:足場解体
    足場があると見えにくい部分もあるので、解体後は改めて仕上がりをチェック

塗装工事といっても、実際に塗料を塗り始めるまでに様々な工程が必要なことが理解いただけたと思います。

職人さんも「見られている意識」があればより一層丁寧な仕事を心がけるもの。納得した作業をしてもらうためにも、最後は発注者である貴方が確認するのが重要です。

とは言え、やはり安心してお任せ出来る業者さんに依頼出来れば何よりですよね。そのためには合い見積もりを取って比較するのが最良の方法です。以上の工程を把握したうえで業者さんと具体的なところを相談してください。